ある実母さんより「お産施設を探しているが見つけることが出来ない」という相談がはいりました。
養子縁組を視野に入れながらのお産施設を探しているが、いくつか民間団体に当たったものの、施設だけの紹介は出来ない(養子縁組前提なら紹介できる)という事で、このお母さんは大きなおなかを抱え、迷い子(お産難民)になってしまったとのこと。
普通の妊婦さん同様だと、医療施設でお産の経過を見ながら養子縁組の相談は出来ない。
養子縁組支援団体では、どうしても養子縁組前提での相談になる、、、
とある民間団体に相談したら、「児相にいったん預けてから、うちで相談に乗る」と言われた。
住んでいる管轄の児童相談所では「養子縁組はやってない」とはっきり言われた。
こういう状況の中、当会に来られた当初はこの世の中で独りぼっち、という雰囲気のお母さんでした。
まずは当会で相談に乗り、実母さんが通院できる産院を見つけ医療施設へ紹介をし繋ぎました。
次にお産費用などのことも安心して貰えるように保険を使ったお産制度などをきちんと説明し、普通分娩だと国からの一時金により殆どのお産費用がカバーされるのでそんなにお金がかからない事、などなど、若いお母さんが持っていた沢山の不安を取り除きました。
医療の方が偏見無しに受け入れてくださったのを知って、「安心して産みだす事に専念出来るんだ、良かった」となれたとき、お母さんからやっとポツリポツリ、今まで起きた辛い話などもお聞かせいただきました。
そして実母さんが一番悩んでいたのは「今(妊娠7か月)は100%養子縁組に赤ちゃんを託すと決められない」という事でしたので、「今から「養子縁組で」「自分で育てる」と決めるのではなくまずは妊娠期間を健康に大切に過ごしましょう。
お産後に、色々な自身の状況を考えて、やっぱりどうしても「育てられない」となったら、その時に養子縁組の道を進むことにしましょう」という話になりました。
その折には、当会よりきちんと各行政、団体機構へも繋ぎます、というお話もしました。
医療施設のお医者様、助産師さんたちにも養子縁組の事を視野に入れた上で、お産に臨む特定妊婦さんだという事をご理解いただき、かつ、普通のお母さん同様のサポートをしていただきました。
当会からも相談員が、検診の度に出来るだけ付き添いました。
陣痛が始まり、お産が近づき、実母さんからも、医療チームからもお産の様子をメールで報告頂き、無事に健康な赤ちゃんが生まれました。
入院中、お見舞いに行った際、赤ちゃんはすやすやと母子同室で寝ていました。
(※養子縁組が視野に有る方でも当会ではお母さんがしたいようにして頂こうというコンセプトで産後は院内で過ごし、授乳、母子同室も、ご自身の気持ちで決めていただきます)
お産後のお母さんの気持ちを尋ねたところ、やはりどうしても自分の今の状況を考えると赤ちゃんの養育は難しい、という事で養子縁組で赤ちゃんを委託することに決まり、この相談ケースをとある民間の養子縁組団体さんへお繋ぎをしました。
赤ちゃんの育ての親御さんとなる方と、その赤ちゃんが繋がり、実母さんはその育ての親御さんのアルバムと手紙を読まれ、「本当に安心しました」と言い、元気に退院して行きました。
その後、赤ちゃんのお迎えに養親さんが病院施設までお越しになり、助産師より保育実習を受け、その後、実母さんと養親さん双方の希望だったため、当会と、医療施設の医師、助産師、民間の養子縁組支援団体が立会いの中、実母さんより直接養親さんへ、大切なお子さんを渡していただきました。
民間団体さんより、時間をかけて養子縁組への承諾について丁寧な説明がなされ養親さん、実親さんそれぞれに承諾書に署名をし、書類も運びました。
また、裁判所での流れも再度説明をし、速やかな対処を双方にお願い申し上げました。
医療の方は「オープンな養子縁組で、本当に安心でき、良かった」「こうした命の救い方があるなら今後も是非繋いでいきたい」という言葉を貰いました。
今後も当会は引き続きこの養子縁組家族を見守り続け、裁判が終わるまでは養育報告書なども医療現場の関わったものと共有し、出来る限りのサポートを提供していきたいと考えています。
当会では2014年、日本財団さんの事業委託を受けて日本ではまだ少ない取り組みの養子縁組制度を含む「にんしん相談」によりお母さんたちが安心してお産に臨める相談事業を行っています。